12月9日

秋講座4回目は、シャーリー・シャーウッドギャラリーで開催中の展覧会から作品をご紹介しました。
描画スタイルはもちろん、サイズや描画材も多様な作品群をご覧いただき、改めてボタニカルアートと呼ばれる絵画の幅広さを実感されたのではないでしょうか。
その中から理想に近いスタイルを見つけ、皆様の制作のヒントにしていだだければ幸いです。



講座終了後にいただいたご質問について以下に補足いたしますが、具体的な作品と一緒に解説した方がわかりやすいので、来季以降にこれらに対応する回を設けたいと思います。
ご質問いただきありがとうございました。


1) イギリスで提供されているボタニカルアート講座の指導法とは、具体的にどのようなものか。

ロンドンのチェルシースクールオブボタニカルアート(CSBA)では、4種類の立体の陰影描写から学び始めます。学習院の講座でもこの大系を参考に進める予定です。今期第2回目の描画技法の回には球体の陰影描写を行いました。配布した資料に応用課題も記してありますので、来季までにぜひ取り組んでみてください。
冬季第1回目、2月16日の「描画法を学ぶ」の回には、円柱の陰影描写を予定しています。続いて円錐、カップ型の基本形を理解した後、複雑な幾何学形のデッサンを行う予定です。最終的には、パイナップルのような複雑な植物を正確に描写できることを目標としています。皆様のご要望を伺いながら、途中、構図や透視法の回を挟む予定です。
CSBAでは週に1日約6時間の座学と実技に加え、週2日間以上を課題に当てるよう指導されます。学習院の講座ではそこまで時間を費やすことができないため、全体の流れを見通せるようになるまでに回数を重ねることになりますが、しばらくお付き合いいだだければ幸いです。


2) ボタニカルアートとオランダ絵画には関係性があるか。

いわゆる「植物画」とは様相の異なるオランダ絵画の「花の絵」ですが、卓越した技術力と観察力は多くの植物画家に影響を与えています。例えば、17–18世紀オランダを拠点に活躍したマリア・シビラ・メリアンは、義父がまさにオランダ絵画の花の画家であったこともあり、直接的な影響が見られます。彼女の作風は18世紀イギリスで活躍したG.D.エイレットに影響を与え、さらにエイレットの作品は、20世紀の画家ローリー・マキューインにインスピレーションを与えています。そしてご存知の通り、マキューインは現代の多くの作家に影響を与えています。
例えはっきりとした面影が見えるわけではなくても、オランダ絵画の要素はバトンのように綿々と現代まで引き継がれていると言えるでしょう。もちろんオランダ絵画に限った話ではなく、草木をモチーフにした西洋建築の装飾や文様も植物画に影響を与えています。
冬季4回目、3月29日の「過去作品から学ぶ」の回に詳しくご紹介いたします。
参考までに、上の画像はオランダ絵画、ラッヘル・ライスの作品の一部です。
Rachel Ruysch (1664-1750)
Flowers in a Glass Vase with a Tulip (1716)


3) CSBAで紹介された透視法について、数学的な作図方法とはどのようなものか。

補足資料としていただいたもので、この内容は植物の描画法とはかけ離れているため、今のところ学習院の講座で扱う予定はありません。
科学的なアプローチより、観察を基に描画技術を高めた方が効率が良いこともあります。
念のため、どのような内容なのか雰囲気だけ画像でご紹介いたします。

4) ご質問内容を忘れてしまったのですが、キュー植物園でペン画を担当しているルーシー・スミスさんの作品をご紹介するとお答えしました。冬季第2回目、3月1日の「植物から学ぶ」の回にご紹介したいと思います。


次回は秋季の最終回となります。
ディオスコリデスの「薬物誌」から、1500年前の植物画をご紹介いたします。
台風で休校になった第1回目の講座が12月15日に延期されています。お間違えのないようにお越しください。

Botanical Art Classes

池田真理子の植物画講座

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