2月7日

オンライン冬講座の1回目は、植物画に使われる画材や道具を中心にお話ししました。

今回は特にたくさんのご質問いただきました。道具に関して、いかに皆さんの関心が高いかが伺えます。
私の気づかなかった点にも気づかせていただき、こちらも勉強になりました。
以下に回答を補足いたしますが、あくまで私の個人的な意見ですので、そんな考えもあるのかと参考程度にとらえていただければ幸いです。


Q1. 修正用のホワイトは色合わせが難しくないか?
商品名をあげると、例えばペーパーカラー修正絵具といった名前で販売されています。5色程のラインナップがあり、使っている紙に合わせて使用できるようです。

Q2. 修正用ホワイトは経年で周囲の紙との差が生じないか?
経年変化の有無や程度はわかりませんが、おっしゃる通り、周囲との差が悪目立ちしてくる可能性は否定できません。作品の刹那的な美しさと、長期的な美しさのどちらを優先させるか天秤にかけて判断することになると思います。
例えば植物図鑑への掲載など、説明図として印刷されるのが目的の作品であれば、修正剤の使用は問題ないでしょう。練習やご自宅で飾られる場合も自己責任で決めてよいと思います。慎重に考える必要があるのは、美術品として第三者の手に渡るような場合でしょう。経年変化に関する情報が不十分な画材は、大切な作品には使わないほうが無難かなと考えています。

Q3. 白い背景を用意する場合、反射光は気にならない?
白い背景のうち、光沢のある素材でなければさほど反射の影響は感じないのではと思います。私は手近にあった和紙を背景に使っていますが、表面も粗く、強い白ではないので、反射はほとんど気になりません。
下の画像のように、ごちゃごちゃした背景を遮断すると、植物の輪郭が明確になります。大学の石膏デッサン室の床や壁が白に統一されていたことを思い出しますと、多少反射光が影響したとしても、色や陰影を正確に捉えるためにも有効な措置だろうと考えています。

Q4. 毛がまばらの筆の名前は?
1/4 SILVERLINE S.982 Jackson’s とあります。
上記の名前でアマゾンで販売されているのを見つけました。そうでなくても、ナイロン製の平筆を散髪して簡単に代用できそうです。

Q5. おしべの花糸のような細密描写に便利な道具は?
まずは面相筆をお勧めします。面相筆は命毛という一本の毛を中心に束ねられています。この毛は彩色するたびに摩耗していきますから、細密描写の際には新しいものを下ろすとより良い描き心地が得られます。
また、講座でお話ししたとおり、作家の中には筆の毛を3本だけ残して全て抜いて使うという強者もいるそうです。もしこちらを試された場合にはぜひ感想を教えてください。
ご紹介した丸ペンですが、出版物への挿画をお仕事にされている作家から勧められたものです。限られた時間内で素早く描けること、また印刷の際には細すぎる筆の線が再現できないのに対して、ペンは適度な太さの明瞭な線が描けるという理由で採用されているそうです。したがって、印刷が目的でない作品には必ずしも適した方法ではないかもしれませんが、私もおしべの描写で丸ペンに助けられた経験があるので、使い方によっては重宝します。

Q7. チューリップの画像編集で使用したソフトは?
パソコンに初期設定で入っている画像編集機能を使い、フリーハンドで画像を切り抜いています。それらのパーツをパワーポイント上で組み合わせています。

Q6. マイメリ(MaimeriBlu) 水彩絵具はどう?
教えていただきありがとうございました。90色のラインナップの中から5色セットを注文して試し塗りしてみました。内訳はキナクリドンレーキ、カドミウムイエローディープ、グリーンゴールド、ウルトラマリンディープ、ペイニーズグレーです。
単一顔料で構成されているということで、個々の顔料の主張が強く感じられました。特に今回購入した5色セットの透明度がバラバラだったせいもあり、混色は難しく感じました。隠ぺい力の差が近いもの同士を合わせて使うなど、慣れるまでコツが入りそうです。

Q8. 単一顔料で構成された絵具が良しとされる理由は?
より本質的な絵具を求める作家にとっては魅力的に映りますが、単一顔料で構成された絵具が押し並べて優れているとは言えません。ものによっては使いづらいこともあります。

単一顔料の絵具が優れている点は、既に混色してある絵具よりも顔料の本質に近いことです。こだわりの製法で作られた高価な絵具の中には、非常に美しい発色や高い安定性が得られるものもあります。
問題点は、絵具の色みが限られていること、絵具によって性質が違うことです。したがって植物画を描く際には、正確な色を再現しづらいのが難点になります。また、性質の大きく異なる絵具で図を塗り分けると全体像がちぐはぐに見えますし、色みが限定されることで図が単調に感じられる事もあります。
このような弱点を補うためには別の手間や工夫が必要になりますので、メーカーによって混色された絵具もバランスよく併用するのが近道かと思います。
どうぞ楽しみながらお気に入りの絵具を探してください。


今回のオンライン講座ではしばしば騒音が入っていたのではないかと思い、ご不便をおかけし申し訳ありませんでした。私自身が集中できず、途中で意識が遠のいたところがあります。

次回は17世紀の女性作家についてお話しします。現代よりもずっと女性の活躍が憚られた時代に、強い意志を貫きながら過酷な人生を生きた作家です。現代作品にはほとんど見られないような技法もご紹介しますので、どうぞ楽しみにしていてください。

Botanical Art Classes

池田真理子の植物画講座

0コメント

  • 1000 / 1000